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2015.02.06
 

「偽相続税対策――下手なアパート経営にご用心」

とある土地持ちの失敗

都心に先200㎡の土地(時価一億円)をもつ定年間近のサラリーマン震は、相続税の大改訂に伴い、自分も課税の対象となるのではないかと恐れていた。
そんなある日、不動産会社の営業マンから次のような話を持ちかけられた。

「今お持ちの土地(更地)をアパートにすれば、評価額が半分になります(つまり、相続税の計算時に5,000万円の財産として見積もってくれるということ)。建物部分はローンを組んで建てればローンの控除が受けられるので、相続税を払わなくて済む可能性が高くなります。大家さんとして住めば新しく家を探す必要はありませんし、家賃も入ってくるというおまけつきです。このチャンスを生かさない手はありませんよ。」

彼の口車に見事に乗せられた震は4,000万円でアパートを購入した。
営業マンのいうことに嘘はなく、更地にアパートを建てて経営するというのは、理にかなっているように見える。
だが、ここには大きな陥穽が潜んでいたのだ。

震の所有する土地はたしかに都心にあったものの、交通の便が悪く人口も少ない住宅地。
そこにアパートを建ててもほとんど人が集まらず、設立後一年が経過しても入居率は50%を割るありさまだ。
おまけに、ローンの返済と固定資産税、さらには不動産会社への手数料の支払いもばかにならず、完全に赤字経営だ。

進退きわまった震はアパートを売ることを決意、不動産会社に問い合わせたが、建物の価値は一度買ってしまうと大きく下がってしまうということで、3,000万円でも買い手がつくか分からないという。
結局、この値段でも買い手がつかず、震はかつて一億円だった土地を、2,000万円で手放すことになった。

こうして、彼はこうつぶやくことになる。

「俺が欲しかったのはアパートなどではない。……金だ!」

 

本当は怖いアパート経営

彼のもくろみは、どうして失敗したのか。
もちろん、素人経営で全くノウハウが無かったことも大きい。
だが、それ以上に重要なのは、そもそも建てる必要のなかったアパートを建ててしまったことだ。
というのも、200㎡程度の土地にアパートを建てたところで大規模な事業経営はできないため、たとえ入居率を100%にしても、もとをとることは難しい。
しかも、一億円の土地にかかる相続税はアパートを建設するお金に比べたらわずかであり、たとえば法定相続人3人で受け継いだ場合、全部で960万円払うことになる。
もちろん、配偶者の特別控除や住宅取得資金の贈与の控除などの特典(詳しくはこちら)を使えば、税金はさらに減る。

このように、なまじ広い土地をもっているからといって、あせって賃貸住宅に換える必要などはないし、下手に不動産業に手を出すのは怪我のもとでさえある。
そのまま残しておくか、更地のまま売却して換金したうえで相続人に分割するなど、他の活用法も検討してみるとよいだろう。