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「相続は専門家に任せて万事解決?甘い!」

手続代行は、確かに便利だが……

当サイトを含め、昨今では多くの相続専門のサイトや行政書士等の専門家が、相続手続きを代行するサービスに着手している。

これを利用すれば、たしかに利用者にとっては煩雑な書類作成や必要書類の準備といった作業から解放されるため、便利なことこの上ない。

 

だが、そこに落とし穴が口をあけているのだ。

たとえ手続そのものは本人が行う必要が無くなっても、財産をどう分けるか、つまり遺産分割の仕方までは第三者に決めてもらうことはできず、当事者間で決めなくてはならない。

以下では、この点を誤解したがゆえに起こってしまった悲劇をひとつ紹介し、同じようなことが繰り返されないためのアドヴァイスを示そう。

 

まかせっきりが招いた悲劇

S氏の家は先祖代々の拳法N清拳を伝承してきた由緒正しい家柄で、家父長たる父親は、地元の名士だった。

彼の死後、長男は間違いの起らないようにと一流の弁護士、有名税理士等を集め、万全の布陣と自負していた。

財産は不動産が主で、父親が経営していた道場もある。

相続人は長男と母、妹の三人で、お互いの関係は良好。

自分の言うことにこれまで特に逆らいもしなかった他の二人は、今回も長男の決定には二つ返事でしたがってくれるだろうと高をくくっていた。

 

ところが、弁護士は長男の意向を優先するあまり他の相続人の意見を聞こうとせず、依頼人に有利なように事を運ぼうとした。

故人の事業は長男が継承することになっていたのだが、不動産の大半までも受け継ぐように取り計らっていたのだ。

彼の言い分では、不動産の一部を売却して相続税の資金とし、残りを一人で継げば後々処分するのに手間がかからないという。

これに異を唱えたのが女性陣だ。あまりに不公平な配分に憤りを覚えた二人は抗議し、長男と弁護士に、遺産分割の方法を見直すよう求めた。

思わぬ反撃に窮した長男はあわてて弁護士に助けを求めるが、多忙な先生様はなかなか連絡が付かず、やっとのことでコンタクトがとれたと思うと、「お宅の案件はもう終了している」と、取り付く島もない。

相続税の申告・納付が間近に迫っていることもあって<sup>※</sup>財産は上記のように分けることになり、取り分が不当に少なくなった女性二人には不満が残り、仲のよかった一家には、消えることのないわだかまりが残ってしまった。

K志郎一家の二の舞を避ける

此度の不和を招いた根本的な原因は二つある。まず、長男自身が専門家や他の遺族とのコミュニケーションを欠いていたことだ。

どんなに優れたエキスパートでも、依頼人全員の思いをテレパシーで読み取り、それぞれの意向に沿った仕方で手続を進めることなどできない。

そのため、依頼者はあらかじめ財産の分け方や処分の方法について話し合っておき、合意しておかなくてはならないのだが、今回の一家はその過程を省略してしまった。

しかも、長男は弁護士に自身の意図を十分に伝えずほぼ一任してしまったために、後者はともかく依頼者に有利な提案をし、それが十分な確認もないままに通ってしまったのだ。

 

また、専門家同士のコミュニケーションも十分でなかったことも、もめた原因の一つだ。

相続税には配偶者の特例控除というものがあり、配偶者は税制面で厚遇される。

今回も、母が相続する土地の割合を増やしておけば家族全体で納める税額は少なくなり、長男以外の遺族の不満もある程度解消されたはずだ。

税金のプロである税理士は当然このことに気づいていたのだが、弁護士に遠慮して口をはさまなかったという。

 

このように、たとえ能力のある専門家が仕事を引き受けても、肝心の依頼者の間で、相続内容について合意がとれていなければ実力は十分に発揮されない。

さらに、専門家にしても万能ではないため、どうしても気付かない点や死角は存在しうる。

それを相補完するためにも、依頼する側はただ著名な人材を寄せ集めるのではなく、盤石なネットワークのある専門家を探す必要がある。

 

相続はあくまで当事者である家族の問題であり、何から何まで第三者に代行してもらうことはできない。

このことを念頭において、依頼者は家族間で遺産分割について話し合い、その内容を専門家に伝えるべきだ。

 

※相続税の納付は被相続人が亡くなってから原則10カ月以内に行わなければならず、期限に遅れると追徴金を課される。