1. ホーム
  2. お役立ち情報
  3. 「子供のためを思ってやったのに……恨みを買う名義預金」

「子供のためを思ってやったのに……恨みを買う名義預金」

名義預金が招いた悲惨なお話

先祖代々の拳法を受け継ぐアスリートのK志郎は父R健を亡くし、彼の遺産を相続することになった。

資産家でもあった父の遺産は億に達するほどだったが、K志郎は四人兄弟の末っ子であるため受け取る額も四等分(全財産を我が物にしようとする野望の持ち主はいなかった)。

「俺の相続財産は3,000万円にもならぬ。ならば相続税など払う必要もなかろう」と胸をなでおろしたK志郎は、自らの取り分を受け取った後、特に税務署に相続税の申告もせず平和な日々を送っていた。

 

だが、世紀末は突如として訪れた。ある日、税務署から調査官を名乗る男性がやってき、彼にこう告げたのだ。

 

「お父様は生前、あなたの名義で口座を開設、そちらに多額のお金を、毎年100万円ずつ振り込んでおられました。こういう場合、K志郎様は遺産を御兄弟よりも多く相続していることになり、しかもその額は、相続税の対象となるほどだったのです。

通常、贈与されたお金は年間110万円までは税金がかかりません。

しかし、受け取られるご本人が贈与を認知していない場合、生前贈与とは認められません。

そのため、先日相続された分も合わせて、相続税を払っていただくことになります。」

 

K志郎は愕然とした。父が病に冒されていたことは知っていたが、まさか自分に生前贈与を行っていたとは……。

そして次の瞬間彼の心に芽生えたのは、父の自分に対する思いやりへの謝意ではない。

相続税を申告せず、納付が遅れたことで追徴金が課されたことへのやり場のない怒りだ。

地に突っ伏して「ちくしょお~」とうめくK志郎。

父の心遣いが裏目に出てしまった体だが、今回のような悲劇はどうすれば防げたのだろうか。

生前贈与と認められるには

まず、R健はこっそり息子名義の口座を作り、そこにお金を振り込んでいたのだが、受贈者に贈与する旨を伝え、本人の了承を得たうえで入金すべきだったのだ。

ただ、口伝えで聞いただけで受贈者本人が何もしなくては、認知の証拠が残らない。そこで、贈与される側は自分名義の口座を管理、つまり出・入金をしたり通帳を管理したりといったことを行わなくてはならない。

さらに、先の税務調査官の話にあった、年間110万円までの贈与なら税金がかからないという制度を暦年課税というが、これを認めてもらうには契約書を作成したうえで(契約書のひな型と記入例はこちら)贈与を受けた年に確定申告しなくてはならない。

申告するのは、当然もらった本人だ。

こうした方法で、受贈者は自分が贈与を受けていると分かっていて、その財産は自ら管理できているという証拠が第三者に示せるのだ。

 

名義預金にはこうしたリスクもあるが、メリットもある。

とりわけ、贈与があったという事実を白日のもとに示しながら財産を譲渡でき、しかもそれは現金であるために自由に運用できるという点だ(不動産や物品だと、そうはいかない)。

故人の預貯金は死後凍結されて引き出せなくなるうえ、その他の財産も処分するには名義変更が必要となるなど、被相続人の財産は運用するのに手間と時間がかかる。

一方、生前贈与で相続人がそれをもっておけば自由に使えるため、葬儀や当座の生活費などで物入りなときには大いに役立ってくれる。

 

他の相続・節税対策同様、名義預金も使い方次第では毒にも薬にもなる。

正しい利用法をおさえ、適切に運用しよう。

そして、親御さんにはくれぐれも子供の口座を勝手に作らせないように……。

※たしかに、金融機関などを一切介さずにこっそり贈与すれば口座を開いて入金するより手間は省けるが、多額の財産の移譲があれば税務署は嗅ぎつけ、調査の手を回すことになる。ことが発覚してトラブルになるよりは、公明正大に生前贈与した方がよいだろう。