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事業継承の今日この頃――ゆくゆくは子供に…は昔話?

大手家具メーカーのお家騒動

大手家具販売社「大塚家具」のトップがもめている。

創立者大塚勝久氏は現在同社の会長を務めており、社長の地位は平成21年に長女久美子氏へと継承された。

だが、その座を巡る親子の争いは熾烈なものだ。勝久氏は度々社長に舞い戻り、娘をトップから引きずりおろしている。

マスコミの報道を通じて血肉の争いはこれまで以上に大きく取り上げられ、話題になっている。

2月26日の記者会見で社長が「会社の発展に合わせて経営体制の切り替えをしなくてはならない」という趣旨の発言をするなど父親が築いた経営方針から決別する意向を示す一方、

会長は前日の会見で「久美子社長が示している次期の経営体制は経営にプラスになるとは思っていない」と、久美子社長の経営方針に真っ向から反対する姿勢だ。

 

今回の騒動は、もちろん親子の経営観の違いや世代間格差から来る視点の違い―勝久氏は一人一人の顧客に従業員がつき従って案内するのが客様のためになるという一方久美子氏は来店者が一人で見て回れる方が気軽な雰囲気でよいと主張するなど―も大きな要因だ。

だが、果たしてそれだけにとどまる問題なのだろうか。

一連の顛末を手掛かりに、先代と後継者の間で対立をなるべく生まない事業継承のあり方を探ってみたい。

今回は、事業承継する人物の選任の仕方を並べ、それぞれの長所短所を確認しよう。

事業承継、三つのパターン

事業継承の主な形式を表にすると下のようになる。

 

大塚家具の場合は親族間で事業継承が行われているが、これは漸減傾向にあるものの、中小企業では最も多く見られる事業承継方法だ。

こうすると早めに候補者を決めておけるし、親の事業を子が継ぐというあり方は内外の理解を得やすいというメリットがある。

反面デメリットもあり、経営能力に秀で、しかも事業の運営に意欲的な人材が親族にいるとは限らないということだ。

特に昨今の少子化を踏まえると、次期代表の候補者を親族の中だけから選び出すことはますます困難になるという観測もある。

 

そこで、外に目を向けることになる。

親族での継承に次いで多いのは、社内の人物に後継者を求めるケースだ。

熟練の従業員や役員の場合、その企業での経験が深く、業務内容に精通しているためスムーズに事業継承ができるうえ、適任であれば社内の反対もそう声高にはならないだろう。

但し、この場合自社株等の資産をどうするかという問題が出てくる。

社内の人間といえども第三者に資産を無償で譲渡することは考え難く、自社株を後継者に買い取ってもらうことになるのが一般的だが、その資金を準備できるかどうかが問われるところだ。

 

また、日本ではまだ広まっていない感があるが、第三者の承継、すなわちM&Aという手もある。

これなら広く候補者を募ることができるし、そもそも自社株の売却を前提に取引を行うので、限経営者は売却益を確保しやすい。

ただ、売却額が自分達の希望に沿ったものとなるか、また従業員の雇用は買収後も確保されるのかという不安は残る。

 

このように、事業継承の仕方には一長一短があり、どれが正解ということはない。

後継者が先代経営者の理念を引き継ぐべきか刷新すべきかについても絶対的な解答は存在しないので、オーナーは会社の状況を見据え、存続と繁栄のためにはどの選択肢が最も妥当かを判断しなくてはならない。

参考記事:http://toyokeizai.net/articles/-/61813

出典:中小企業庁「中小企業白書」(2014年度版)

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